創薬論(1) 再生医療

たまには本業についても、私見を述べてみたい、徒然なるままに。

ずばり、再生医療の課題はこの三つ。
大量製造、メディカル研究デザイン、各種法規制。一番大事なのは最初の大量製造。そりゃそうだ。あとふたつは最初ができての話。高品質・低コストの製品がつくれないと話にならない。にも関わらず、特に法規制の議論のセッションが学会等で組まれていることに私はびっくりしている。

はっきりいって、日本国内CDMO (Contract Development Manufacturing Organization, 医薬品受託製造開発機関: 企業の委託を受け、医薬品製造のみならず開発まで代行する機関) は相当出遅れている。ノウハウのある日本国外の会社と戦略的パートナーシップを結ぶ、あるいは合併するしかない。はっきりいってそれ以外の戦略、つまり自社製造にこだわっている会社はこの時点で負けている。驚くべきは少なくないメーカーはこの戦略をとっていること。

国内大手製薬、いやCDMOの経営陣、アカデミアの先生方はこのプロセス製造を舐めている。化成品(注: 一部の化成品は未だに高難度)とバイオ医薬品(抗体含むタンパク質、細胞、ウイルス等)は製造レベルは全く違う。特にウイルス、細胞は最高難度。どのくらい難しいか。たとえるなら、まともな料理を作ったことがない人が三ツ星シェフの料理店に対してランチタイム戦争に挑むようなもの。。彼らはバイオ医薬品の製造技術をまったくわかっていない。わからない人がテキトーな判断で進めているに違いない。そうとしか考えられない。プロセス工学という単語すら知らないのではないか。回文培養とか知っているわけがない。

転職活動の中で某CDMOを受けた。最終面接で落ちた。それはいいのだが、面接官の知識レベルが余りにも低すぎてショックを受けた。こんな人間が采配を振るっているのか。退職した製薬メーカーの経営陣の地頭のよさを痛感した。地頭をよくする方法なんて存在しない。いい人を連れてくるしかない。

声を大にして言うが、地頭のよさはライフサイエンス・製薬メーカーの経営陣に最も求められる。特に最高難度の再生医療用の細胞の大量製造に関しては。逆に言うと、これがあれがまだ巻き返せるのだ。ノウハウ、実績、経験がある、とか関係ない。断言してもいい。大リーグ経験のない大谷翔平は米国ですぐ活躍できた。それと全く同じ。

日本は創薬敗戦確実。オプチーボに続きこの再生医療においても、大量の外貨流出は間違いない。火を見るよりも明らかだ。

救世主を待つしかない。えっ、私ですが。まさかね。。。